今日は、雇用促進税制について、解説したいと思います。
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雇用促進税制とは
平成23年4月1日から平成28年3月31日までに開始する事業年度に、雇用者増加数5人以上(中小企業は2人以上)、かつ、雇用増加割合10%以上の要件を満たす企業は、雇用増加数1人あたり40万円の税額控除が受けられます。ただし、当期の法人税の10%(中小企業は20%)が限度となります。
次の事業年度については、この制度の適用はありません。
- 設立(合併による設立を除く)の日を含む事業年度
- 解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度
- 清算中の事業年度
5人以上かつ10%以上の雇用者増などが要件
この制度を適用できるのは青色申告書を提出する法人で、以下の要件を満たす必要があります。
- 適用年度とその前事業年度に、事業主都合による離職者がいないこと
- 適用年度に雇用者(雇用保険一般被保険者)の数を5人以上(中小企業の場合は2人以上)、かつ、10%以上増加(注1)させていること
- 適用年度における給与等(注2)の支給額が、比較給与等支給額(注3)以上であること
- 風俗営業等を営む法人でないこと
(注1)雇用者増加数は、適用年度末と前事業年度末日の雇用者数の差です。
雇用増加割合=適用年度の雇用者増加数÷前事業年度末日の雇用者総数
(注2)給与等とは、雇用者に対する給与であって、法人の役員と役員の特殊関係者(役員の親族など)に対して支給する給与および愛食給与の額を除く額をいいます。
(注3)比較給与等支給額=前事業年度の給与等の支給額+(前事業年度の給与等の支給額×雇用増加割合×30%)
書類の提出が必要
この制度を受けるためには以下のとおりあらかじめ書類の提出が必要となります。
- 適用年度開始後2ヶ月以内に本社・本店を管轄するハローワークに雇用促進計画を提出すること
- 適用年度終了後2ヶ月以内に本社・本店を管轄するハローワークに雇用促進計画の達成状況の確認をすること
- 達成状況の確認を受けた雇用促進計画の写しを確定申告書等に添付すること
具体例1
次の資料に基づき、当社の当期における特別控除額を計算しなさい。
(1) 当社の前期末及び当期末の雇用者数は次のとおりであり、前期末及び当期末において法人の都合による離職者はいない。
① 前期末・・・15人
② 当期末・・・18人
(2) 当社の前期及び登記における給与等の支給額は次のとおりである。
① 前期・・・75,000,000円
② 当期・・・87,000,000円
(3) 当社の期末資本金の額は1億円(中小企業者等)であり、株主は個人株主である。別表一(一)②における法人税額は26,700,000円である。
解答
【雇用者数増加による特別控除】
(1) 判定
① 18人-15人=3人≧2人
② 3人/15人=20%≧10% 雇用増加割有20%
③ 87,000,000≧75,000,000+(75,000,000×20%×30%)=79,500,000
∴適用あり
(2) 控除基準額
400,000×3人=1,200,000
(3) 税額基準額 (中小企業者等なので20%限度)
26,700,000×20%=5,340,000
(4)(2)<(3) ∴1,200,000 ⇒雇用者数増加による特別控除額
具体例2
次の資料に基づき、当社の当期における特別控除額を計算しなさい。
(1) 当社の前期末及び当期末の使用人数は次のとおりであり、前期末及び当期末において法人の都合による離職者はいない。
① 前期末・・・21人(役員Aの親族である使用人Bが含まれている。)
② 当期末・・・27人(役員Aの親族である使用人Bが含まれている。)
(2) 当社の前期及び当期における給与等の支給額は次のとおりである。
① 前期・・・89,100,000円
② 当期・・・97,500,000円
(3) 当社の期末資本金は2億円であり、株主はすべて個人株主である。別表一(一)②における法人税額は26,700,000円である。
解答
【雇用者数増加による特別控除】
(1) 判定
① (27人-1人)ー(21人-1人)=6人≧5人
② 6人/(21人-1人)=30%≧10% 雇用増加割合30%
③ 97,500,000≧89,100,000+(89,100,000×30%×30%)=97,119,000
∴適用あり
(2) 控除基準額
400,000×6人=2,400,000
(3) 税額基準額
26,700,000×10%=2,670,000
(4)(2)<(3) ∴2,400,000 ⇒ 雇用者数増加による特別控除額
ポイント
- この制度を受けるためには事業主都合による退職者がいないことが要件となる。
- 所得拡大促進税制との選択適用となる。
- 租税特別措置法なので適用年度を確認する。