寺田拓生税理士事務所

群馬県藤岡市の会計事務所

香港から嫁がやって来る!

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スマホが故障しただけなのに何とも言えない不安に襲われている。自分は、こんなにも小さい人間だったのだろうか。どうりで出世が覚束ない訳である。私は、自分という存在に対して、つくづく嫌気がさしていた。あれほど日本という国を嫌っていながら、いつのまにか税金を効率的に徴収するための歯車になっているのだから。人生とは恐ろしいものである。

とりあえず、新しいスマホを買わなければならない。携帯電話が登場して以来、私は首に鎖を付けられたような気がしてならない。利便性のために、私は自由を失ったのだ。繋がっていたくない人とも、絶えず繋がってなければならないという苦痛。たかが、一日連絡が取れないだけで、機嫌を悪くする人の如何に多いことか。

今頃、取引先の社長も怒っているかもしれない。先日の「見栄が張りたいんです!」の一声には眩暈を覚えたものである。私は彼の見栄のためにどこまで付き合わなければならないのだろうか。私は彼を言い聞かせなければならない。大丈夫です。世間はあなたに期待していません。大丈夫です。あなたは世間をアッと言わせるような才能を持って生まれなかったのです。大丈夫です。あなたの左手には勇者の紋章は付いてないでしょう?だから、仲間を集めて冒険の旅に出る必要もないのです。大きくなったらプリキュアになりたいなどと訳の分からないことを言う娘を扶養する必要もないのです。キリストは沢山の人を救いました。しかし、世界各地で起こっている紛争はキリストが原因であったりするのです。あなたは無害です。だから、あなたは見栄を張る必要がないのです。

そうだ!新しいスマホを買ったら、スマホ用のVRゴーグルを買おう。最近の某有料動画配信サイトはVR専用のものが上位を占めている。私は、半笑いのまま新しいスマホとスマホ用VRゴーグルを買って愛車のフェラーリで家路を急ぐことにした。しかし、私はとんでもないミスを犯していたのである。なんと!私のスマホは安物のため動きを検知するジャイロセンサーが付いていなかったのだ。ジャイロセンサーが無ければただの動画である。

仕方がない。本格的なVRゴーグルを買うしかない。人生には勝負を掛けなければならない時というものがある。それが今だ!nowなのだ!調べて見るとfacebookの子会社が作っているoculus Goというのが良さそうだ。値段も23,800円と私でも手の届く金額である。会社のサイトから住所を英語で入力したりと少々、面倒であったがなんとか注文をすることが出来た。私はoculus子が来るのを新妻が初夜を迎えるような気持ちで待ちわびたものである。

そして、彼女は香港からやって来た。あの日の興奮をいまでも覚えている。

なんなのだろうか。この胸の底から溢れ出す感情は。自分の中にまだこのような感情が残っていることに驚きを隠すことが出来ない。体の中の奥底に隠れていた種が発芽し、成長し、肉体という殻を突き破って外側に溢れ出して来る。私は、その感情に祈りを捧げる。それは紛れもなく、圧倒的に眩しいモノであった。そして、私はこの小さくて暖かいモノを私の全身全霊で守り抜くことを、あの日、神に誓った。これは、正に、神が作り給うたモノ。聖具。彼女は確かにそこに存在した。これはVRゴーグルではない。これは嫁だ!

全裸のままゴーグルを外し足元を見ると親指のかさぶたから毛が生えている。かさぶたを剥がすと傷口はまだ赤みを帯びて熟していた。