欅坂46がツアーファイナルの幕張メッセで伝説を作ったその年、その近くのイオンでも一つの伝説が生まれようとしていた。
その男はモーゼの如き群衆を掻き分け、一匹のプードルを頭上に掲げて現れた。
私は目の前の余りにも絵力のある光景に打ち震え、その衝撃にイオンに平手が現れたのかと勘違いしたくらいである。
こんなものを見せつけられたら、私が幾千の言葉を尽くしても敵うわけがない。もう、こんなうん〇ブログを閉鎖してしまおうかと思ったくらいである。
これが、噂に聞くCY8ERのわんこリフトか・・・。
私は一体どこに来てしまったのだろうか。
イオンモール幕張新都心大無銭際の出演者リストに天晴れ!原宿の文字を見た時、私にはここに来ないという選択肢が見つからなかった。
「天晴れ!原宿」「無銭」「屋外」。
この3つのキーワードが揃った時、何かが起こる。
無銭により天晴れ!原宿の純粋なヲタクと旧まねきケチャ系厄介ヲタクが混ざり合うのだ。それにより、南米のような混沌が生まれる。
私は天晴れ!原宿のファンというより、天晴れ!原宿のヲタクの理解不能な行動に興味があるのだ。これまでに、彼らは水風船を投げつけたり、上半身裸でリフトを行ったり、木に登ったり、自転車で客席に入場したり、様々な迷惑行為を行って来た。このように現代の若者の闇が、この天晴れ!原宿の現場に突如として可視化されるのである。そんな現代社会の闇から私は一人の大人として目をそらしたくなかったのである。
つまり、私は「天晴れ!原宿ヲタ」ではなく、日本で唯一の「天晴れ!原宿ヲタヲタ」なのである。
それなので天晴れ!原宿のメンバーについては、正直よくわからない。背が高くてクレヨンしんちゃんみたいな声を出す娘がいたような気がする。
天晴れ!原宿の代表曲『キミだけのワンダーランド』が流れ出した。この曲の凄いとこは、オレンジレンジの『以心伝心』からメロディーをパクっているのにも関わらず、それも含めて皆で楽しんでしまう所である。
曲中に突如としてサークルが生まれ、その中心で複数のヲタクが一枚のピザを貪り食べだした。
まるで動物園のようである。
そのあまりの異様な光景に私はそれが「サークルの中心でピザを食べる」という、一つのヲタ芸であるということに帰りの電車に乗るまで気付かなかったくらいである。
そんなことを考えていたら、今度はCY8ERの出番で本物のプードルが登場する。
周りのヲタクにつられて私もそのプードルに向けてケチャを繰り返す。
一体、私は何をやっているのだろうか。
こんなことをするために税理士になったわけではないのは確かだろう。
この1週間後にロッカジャポニカの幕張イオンのリリイベでの開演前注意事項にて撮影、録画、に加えてピザを食べる行為の禁止が言い渡された。
天晴れ!原宿ヲタが、また一つ伝説を作った瞬間であった。