寺田拓生税理士事務所

群馬県藤岡市の会計事務所

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6円の物語

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これは一通のメールから始まる物語である。

「レンタルカード更新のお知らせ」

レンタル
準新作&旧作
DVD、ブルーレイ、VIDEO、CD
レンタル1枚 無料
手続きにかかる費用:210円

今年も、もうそんな季節か。しかし、時が過ぎるのは本当に早いものだ。最近、めっきり老け込んでしまい夜9時には眠くなってしまい、朝の4時には目が覚めてしまう。考えて見ると私も父が亡くなった年齢を4つも過ぎてしまった。

レンタル1枚無料と書いてあるし、休憩がてら行ってみるか。

私は愛車のレクサスのキーを握り某大手DVDレンタルチェーン店に向かうのであった。そして、ガンダムのDVDを無料で1枚借り無事レンタルカードの更新を終える。

任務完了!

帰り道『哀 戦士』を口ずさみながら愛車のレクサスのハンドルを握る手は軽い。しかし、私は家に帰ってレシートを見た瞬間、驚愕の事実に気付いてしまうのである。

レンタル年会費 216円

216円!!

メールより6円高いではないか!

私は自分が犯したあまりにも大きな失態に目の前が真っ白になる。更新料210円と書いてあったのに216円払ってしまったのである。そしてなんたる横暴。しかし、こんなことが許されていいのだろうか。某大手DVDレンタルチェーンの会員は日本の総人口の半数の6千万人にのぼると言われている。つまり某大手DVDレンタルチェーンは年間3億6千万円にものぼる会費を不当に会員から搾取しているのだ。

立ち上がなければならない。私が立ち上がらなければならないのだ。某大手DVDレンタルチェーンに対して私は6円を返して貰う聖戦に挑まなければならないのである。これは消費者の代表として、また会計の門番を司る私の天命だと感じたからである。私は今日この日のために会計学を学んで来たのだ。

私は急いでガンダムのDVDを見終えて愛車のレクサスの手綱を握り某大手DVDレンタルチェーン店に向かった。

レジに行くと幸の薄そうなバイトの女の子が暇そうに立っている。

「あの今日、レンタルカード更新したものなのですが・・・」
「このメールだと更新料210円と書いてありますよね」
「だけどこのレシートには216円と書いてあるんです!」

私が某大手DVDレンタルチェーンの完全なる横暴の証拠を突き付けてやった瞬間である。

すると幸の薄そうなバイトの女の子は何も言わずそっと私の手のひらに6円を返してくれた。しかし、その表情には全ての感情が欠落しているようであった。「少し爪が伸びたかな」くらいの全くの虚無の表情であった。

店の外では桜の花びらが散っている。

某大手レンタルチェーンの企業名は伏せておくが、私の右手に持ったTカードは微かに震えていた。

(執筆時間5分)