欅坂46のデビューシングル「サイレントマジョリティー」のカップリング曲に『乗り遅れたバス』という楽曲がある。この曲は途中でメンバー加入にした長濱ねるそのものを歌っている楽曲と言っていい。
長濱ねるは、欅坂46の最終審査を受ける直前に実家に帰っている。
三次審査と最終審査が2日連続で東京であったのだが、三次審査に合格してそのままホテルに泊まって翌日に最終審査を受ける前に、母が迎えに来て引き戻されたのだ。
最初は反対していた父は私が三次審査に合格した時点で「腹をくくる」って言ってくれた。
しかし、母はアイドルという職業に間違ったイメージを持っていた。
母は姉に「ねるが不安だから応援してくる」と言って東京に来たらしい。
でも、あとで聞いたら、母はそのときは応援したい気持ちと、どうしよう?っていう気持ちで葛藤していたようだ。
でも、結局、母はスタッフに「娘を連れ戻します」って言って。
そのとき、私は一言も発するこが出来なくて。
終わったんだ・・・って。
絶望を感じながら母の横でずっと泣いていた。
実家に戻されてからは、自分の部屋に閉じこもって。
どうしようもなくて、叫びたくても叫べなくて・・・。
悔しくて。
人生で初めて悔しっていう感情が溢れて出して来た。
自分が親に反抗できなかったもどかしさもあったし、そんなときでさえ親に怒られたくないと考えてしまう自分が情けなかった。
進学校も親のために通っていた。
そういうのから逃れたくてオーディションを受けたのに、結局、親に人生を左右されてしまうのか・・・って。
そんなときに父がスタッフに連絡して乃木坂46のコンサートに招待されたのだ。
福岡国際センターで行われた『真夏の全国ツアー2015』
コンサートのオープニング映像で秋元真夏のお父さんからの手紙が読み上げられる。
いろんな葛藤をしながら真夏さんの夢を応援しているんだというのを知って、その映像を観ながら私の両親も泣いていた。
そこで親の気持ちも変わったようだ。
娘の人生を応援しようって。
一番心に残っているのは、姉が母を説得するときに「親は子供の障害物を取り除くんじゃなくて、子供がぶつかったときに手を差し伸べればいいんじゃない?」って言ってくれた言葉だ。
お姉ちゃんほど優しい人に私はいままで一度も会ったことが無い。
今までは敷かれたレールの上を生きてきた。
このままずっと、親や学校の先生の言われた通りに生きていくのかなって思っていた。
アイドルになりたいというよりは、別世界に行きたかった。
高校2年生のときに進路希望調査があった。
地元から出たくて東京の大学を志望していたんだけど、ちょうどそのときに欅坂46のオーデションを知って「一年早く東京に行けるかもしれない!」って。
歌って踊ってキャピキャピっていうのに憧れていたわけじゃない。
そういうところはメンバーの平手にも似てるかもしれない。
可愛いとかは苦手。
どちらかと言ったら「凄い!」って言われたい。
もし、みんなと同時にスタートしていたらと考えていた時期もあった。
でも、遅れてグループに入ったからこそ私を知ってくれた人もいるし、それって恵まれているんじゃないかなって最近は思うようになった。
だから、きちんと責任を持って・・・・・・自分には責任があるのだ。
そうじゃないとオーディションに落ちた人にしたら「なんで?」ってなると思うじゃない。
だから、私は選ばれたことに対する責任を持ってがむしゃらにやらないといけない。
真剣にやらないとその人たちにも失礼だから。
よく、私は乃木坂の秋元真夏さんやAKBの篠田麻里子さんのような「1.5期生」と思われることが多い。
しかし、真夏さんは最終審査に合格した後に休業していて、篠田さんは人気投票でファンの方に認められて加入したので、私とは全然違う。
ひらがなけやきのフォトセッションに行ったとき、合格した瞬間にメンバーみんなが泣いていた。
そのとき、最終審査を受けていないのは自分だけで、この先ずっと私の弱みになっていくんだろうなと感じている。
選ばれる瞬間を経験してない弱さというか。
私は凡人だし何もできないけど、選ばれたからには「期待はずれ」って思われないように必死にもがいて、恩返しをしていきたい。
先日、握手会に受験生の方が来てくれて「受験なので今日の握手会が最後なんです。パワーをください」って言われた。
それで「一緒に頑張ろうね」って言ってギュッってしたら、その人がその場に泣き崩れて。
「本当にありがとうございます。頑張ります!」って。
あっ・・・・今、私ってそういう人になれたんだ。
そういうところに来ちゃったんだ。
ここでなら誰かの力にもなることができるかもしれない。
坂の途中で途方に暮れてなんていられない。
ここで自分の居場所を作って行こう。
<参考文献>BUBKA (ブブカ) 2016年08月号
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